消えた願望
消えた願望
親であっても先生であっても酷い人間がいればそうではない人間もいる。いつまでも酷い人間に捕われている必要は無い。時には逃げる事も最善の方法だ。追ってこなければの話だけれど。私は清ちゃんに助けられた。清ちゃんみたいな優しい人間になれるよう努力しよう。一番私の願望を消してくれた目の前の優しい恋人を幸せにする努力をしよう。…もう、死ぬ努力をしなくてもいいんだ。 心配をかけた母にふかぶかと頭を下げて実家を後にした。母と姉が病気にでもならない限りもう帰らない。帰れない。帰りたくない。でも私には居場所が出来たから。 「清ちゃーん」 「ああああアアァらーんちゃーん!」 「ああどうしよう。会いたかった。でもしばらく仕事してなくて何からどうしたらいいのか」 「もう少しゆっくりしてなさい。僕んち行こ」 「えっえっ!?」 一人暮らしの清ちゃんのアパート… 「お帰りなさい~お母さんいてごめんなさいねぇ」 「あっ!お母さん」 「まだいたのかよ…っとマネージャーから電話だ。ちょっとごめんね」 「蘭ちゃん、こっち座りなさいよ」 清ちゃんのお母さんと二人きり…説教とかされちゃうかも。 「あんた結婚しなさいよ。夜働いてたんだって?そんなのやめて主婦がいい。そうしな」 「あ、その、は…」 「あれわかった。同居の事が心配?大丈夫よぅ。あたしまだまだ元気だし彼氏とラブラブだし」 「いえそんな心配はっ…」 「清春はねぇ…頼りない優しすぎる子に見えるけど…そんな事ないんだよ。昔、あの子に命を助けられたんだ」 「え」 「あの子の父親、酒乱でね、DVってやつ?殴られたり蹴られたり、それを見てられなかったんだろうねぇ。ついに奴がハサミを振り回してあたし、切られそうになってもう駄目だって目をつぶったら…」 「つぶったら…?」