大好きだった
「ただいま」


翔ちゃんは、とても小さい声で、俯いたまま目を合わせようともしない


「お帰り」


私の声も小さくて、とても暗い。


翔ちゃんは立ったまんまで動こうとしない


きっと一睡もしてないんだと思う


見るからに疲れきった翔ちゃんが、翔ちゃんをじっと見る私に目を向けた。


「仕事じゃ…なかったのか?」


「うん…休んだ」


「そっか」


「翔ちゃん?座らないの?」


「あぁ…」


ゆっくりと私の隣に座り

下を向いたまま話しだした。


「舞花…連絡出来なくてゴメン」


「うん」


「もう聞いてるんだろ?」

「うん」


「舞花…」


「何?」


「ごめんな…嫌な思いさせて」


「うん」


「許してくれんの?」


チラッと横目で私を見て、また目を附せる翔ちゃん


「もう行かない?」


「……」


「もう、他の女に会いに行かない?」


「……」


「ねぇ翔ちゃん…」


「……ごめん」


「ごめんて何?」


「……」


寝てなくて疲れてるのか、気まずいのか


肩を落として、下を向いたままの翔ちゃん


私は翔ちゃんの目を向けたくて、翔ちゃんを下から覗きこんだ


「翔ちゃん?」


それでも翔ちゃんは目を逸らし続けた。


「翔ちゃん?私達…無理じゃない?」


「……」


「別れ…」


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