秘密~「ひみつ」のこと
ある晩、
歩道橋から
車のライト眺めてたら、
思わず
引き込まれそうになった。

咲のところへ、
飛んでいけるかも…

身体が浮き上がって、
下へ落ちそうになった。

身体半分、
身を乗り出したところで、
あたし、
正気に返った。

死にたくなくて、
両手で力一杯
手すりにしがみ付いて、
必死にもがいた。

歩道橋に
しがみ付いて、
あたしの、
身体、
ブルブル震えてた。

あたし、
何やってんだろう?

こんなとこで死んだって、
誰にも、
気にも留めてもらえないよ!

あたしのことなんか、
誰も見ちゃいないんだ…

歩道橋で立ちすくむ。

震えるあたしに
気を留めて、
立ち止まる奴なんて、
誰一人いない。

あたし、
羽をむしらて
地面に捨てられた
虫けらみたい…

ただ、
苦しくて
もがいてのた打ち回る
虫けらみたい…

あたしの
苦しみなんて、
誰も
分ろうともしない、
って、
分るわけない、
それは
ただ、
あたしだけが
感じる
苦しみだから…



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