秘密~「ひみつ」のこと
「でね、その事件の後、会社では社員同士の無届けの交際がご法度になったの」

「それが、サチコの結婚と関係あるの?」

「あるのよ~」

「あたし吉村部長に詰め寄ったの、あたし達の今までの関係を人事にバラしますよって」

「それって、奥さんと別れて結婚しろってこと?」

「効いたわ~吉村部長、専務目前だったからね。ほら、子供もいなかったし」

「サチコ、心臓ね~」

「自分の幸せの為だもの。今じゃあたし、社長夫人よ。子供も二人」

「へぇ~」

驚いたふりして、
心は何処かへ飛んでいた。

あたし、
騙されてた。

愛されてなんか、
これっぽちもなかった。

少しは心の片隅にあった、
『愛』っていう言葉。

今まで頑張って摑まってきた、
僅かな望みの綱が切れた。

あたしって、なに?

サチコの幸せそうな顔が、
歪んで見えた…
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