秘密~「ひみつ」のこと
「初めまして、ユイです」

精一杯、笑顔で答えた。

「今日、母は出張で留守なんです。母もユイさんに会いたがってました」

「えっ、なんで?」

なんで、翔一さんの奥さんがあたしに会いたいの?

「あたしのこと、色々話しておきたいんだって言ってました。あたし、成績もあんまり良くないし、食べ物の好き嫌いも結構あるし…残していくの、心配なんだって」

「優子はさっぱりしてるんだ。経済的には僕と別れても困らないし、今、仕事が忙しくて感傷に浸ってる暇、ないんじゃないかな。でも、サキのことは別らしい…」

「ママはあたしがパパと暮したいって言ったら、やっぱりちょっとショックだったみたい。でも、もっと大きくなったらイギリスに来てもいいしねって、割とさっぱり」

「なんか、カッコイイママね」

「うん、そう。あたしの自慢のママなんです!あっ、あたしお茶入れてきますね」

サキが席を立った。

「ね、誰も不幸になってないだろ?」

翔一さんが、優しく笑う。

「信じられない…」



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