秘密~「ひみつ」のこと
「あっ、父さん、兄貴!母さん、目、覚めたよ!」

部屋の入口、
立ちすくむ二人の姿。

「みんなで交代で、母さん目覚めるの待ってたんだ…目覚めた時に、一人だと、寂しいだろ?」

正徳さんの顔を見た。

いつもと違う、
優しい瞳。

あたしを、
真直ぐに、
見つめる眼。

何?
何かが変わった?

なんだか、
強張ってた気持ちが、
少しずつ
軽くなっていく。

「心配かけて、ごめんね」

正徳さんが、
あたしに近づく。
あたしの手を取り、
優しく頷く。

「俺は君を失うのが怖かったんだ。あの時も。そして、今も」

あたしを許したのは、
あたしを失うのが怖かったからなの?

「あたし、ほんとうに、ごめんなさい」

あたし、
今は、
謝ることしか、
できない…

「謝るのは、俺のほうだよ。寂しい思いをさせて、ごめん」

涙で前が見えない。

あたしの不安を
寂しさを、
解ってくれるって言うの?
あたしの過ちを
許してくれるって言うの?

「和徳、こいよ!」

兄貴が俺を呼ぶ。

そっか、
俺ら、
邪魔だよな…



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