秘密~「ひみつ」のこと
「なんか、気ぃ抜けたよ~」

「何だ、俺が浮気でもしてるとか、思ってた訳?」

「ホントにそう思ってたら、家になんか来ないと思うけどさぁ」

「なんだ、ちょっとくらい、ヤキモチ妬けよ!」

「俺はだなぁ、こうして家で勉強してても、お前がどこかで浮気心なぞ起こしてないかと、気が気じゃないんだからな!」

「ぷっ、そんなんじゃ、勉強、身に入らないね」

「言えてる。実際、今日、お前が来てくれて、ホットしたんだ」

「あたしには、カズだけだよぉ」

いい感じに、
カズと心が通じ合った気がした。

その瞬間、
部屋のドアを『コンコン』と叩く音。

「お邪魔しまぁ~す」

なんか、鼻にかかった女の作り声が聞こえた。

ドアを開けて入ってきたのは、
大学生くらいの男の人。
両手でティーカップの乗ったお盆を抱えている。

「カズくん、彼女、来てるんだってぇ」

作り声のその人は、
あたしの顔とカズの顔を交互にマジマジ見つめてる。

「お前、結構やるじゃん」

その人は、ニヤッと笑った。

「何だよ、兄貴、見世物じゃないぞぉ」

あっ、カズのお兄さんね。

「兄貴としてだなぁ、可愛い弟が、悪い女に引っ掛かってないか、確かめる責任がある訳だよ、うん!」

「で、君、何て名前?」

「サキです」

「サキちゃん、合格!ってか、カズには勿体ないなぁ。替わりに俺なんて、どぉ?」







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