秘密~「ひみつ」のこと
「サキ、カズくんのこと大好きなんだね」

パパが二階に上がったあと、
唯ママがあたしに聞いた。

「うん」

「好きな人とずっと一緒にいたいって気持ち、今なら、あたしにも分る。好きな人と結ばれたいって気持ちもね」

「やぁだ、唯ママってば…」

「翔一さんには、あんな風に言ったけどさ、あたしだって、サキのことが心配。気持ちが先走って、後悔するようなことがなけりゃって思ってる。でも、相手が好きな人なら、後悔もし甲斐があるって思うけどね」

「…」

「あたしはさ、好きでもない男と一杯寝て、それでサキ、あんたを身ごもったの。それが、どんなに悲しいことだか、わかる?」

「…」

「ごめん、こんな話聞くの、サキだって辛いよね…」

「ううん、唯ママ、あたし聞きたい」

ずっと、
引っ掛かってた、
あたしのルーツ。

あたしって、
何処の誰なのかなって
不安。

「父親が誰か、あたしにだって分らない…あたし、サキには謝っても謝りきれない…」

唯ママの目から、涙がこぼれた。

「本当に、ごめんなさい…」

「でもね、あなたがあたしのお腹から産まれたのは事実だし、あなたが産まれて、あたし本当に嬉しかったの。なんか、あたし一人の赤ちゃんって気がして、いつまでも、サキと一緒にいれたら、それだけで幸せって、本当にそう思ってたの…」

唯ママ…
あたし、
唯ママに抱きついた。

いいよ、
唯ママ…
あたし、
唯ママの子供に生まれたこと、
それだけで、
充分幸せだよ!

「でも、サキはあたしのとこからいなくなっちゃった…その時は、それが苦しくて、耐えられなくて、周りを責めたけど、今なら分る。あたし、自分を大切にしなかったから、もうどうにでもなれって、大切なものを見つける勇気がもてなかったから、バチがあたったの…」

「だから、サキには、あたしみたいな思いは絶対にして欲しくないの、そういう後悔だけはして欲しくないの」

「うん」






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