秘密~「ひみつ」のこと
いつもと変わらない日常。

父さんと母さんと兄貴、そして俺。

別段、
父さんと母さんが、
仲が悪いようにも見えないし、
僕に対する態度が、
兄貴へのそれと違うようにも思えない。

忘れかけてた頃、
中学三年のあの日。

俺の身長は中学三年間でぐんぐん伸びて、
兄貴をはるかに追い越した。

四つ違いの兄貴の身長は167cm。
俺、172cm。
父さん、160cm。
俺が一番高くなった。

久しぶりの家族団らん、
食事の後に、
急に兄貴が言い出した、

「和徳、お前でかくなったなぁ、もしかして俺、抜かれた?」
ってさ。

無理やり並ばされて、
男三人、背比べ。

「畜生、中三で抜かれたら、俺の立つ瀬ないじゃん!」

兄貴が怒ったように俺の背中をバンと叩いた。

その時、父さんがポツリと、

「誰に似たんかな…」

って、俺の方を見ながら呟いた。

僕に向けられた言葉なのか、
独り言だったのか、

その言葉に凍りついた母さんの顔。

怯えた子供のような、
強張った顔。

母さんは、
誰にも気付かれないように、
ひとり、
台所に引っ込んだ。

でも、
俺は見逃さなかったよ。

嗚呼、
やっぱり、

俺は…
父さんの子供じゃないんだ…






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