秘密~「ひみつ」のこと
「俺ってさ、病院で取り違えられた子かもな…なんか、父さんにも母さんにも似てないし」

ぽつり、
兄貴に漏らした、
俺の不安な気持ち。

「何言ってんだ、おまえ、ばっかじゃない!」

一笑に伏された。

「お前、死んだ目黒の爺ちゃんに似てんじゃない?お袋の父さん。お前が生まれる前に死んじまった。俺の赤ん坊の頃の写真には写ってるぜ。あの歳ではめずらしく170cm位はあったっていうし、顔長いとこなんかも似てんじゃない?」

兄貴はわざわざアルバムを出してきて、
俺に目黒の爺ちゃんを見せてくれた。

確かに、
ちょっと似てるかも。

俺、
そんなに切羽つまったように見えたのかな?

「だいたいさ、俺はお前が生まれた時からお前の兄貴なんだぜ。今頃、お前は俺の本当の弟じゃありません、なんて言われても、俺としても困るわけよ。お前はお前。俺の弟。それでいいじゃん」

なんか、
慰めるような、
実は兄貴は真実を知っているかのような、
そんな物言いだった。

でも、
嬉しかったよ、
兄貴。

俺中三、15歳、
四つ年上、大学一年の兄貴が、
この日ほど大きく見えたことはない。

そうだよな、
俺にとっても、
生まれた時から兄貴は兄貴で、
俺の兄貴だよな。

その日から、
くよくよ悩むのはやめにした。

俺は俺。
変えようもないし、
変わりようもない。

親父が俺の本当の父親でないとしても、
育ての親には変わりないし。

悩んでも、
事実が変わるわけじゃない、
今を受け入れるしかない、
俺、15歳の決意。









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