秘密~「ひみつ」のこと
どこで、歯車が狂ったのかしら…

サキが中学に入った頃から、
あたしも仕事に熱中することが多くなった。

家族が夫々、
自分のことに夢中になった。

あなたも、
家族以外の他のこと、
他の女に、
夢中になってたんだね。

あたし、
自分のことと、
サキのことで手一杯で、
全然気がつかなかった。

その女が、
妊娠、
したなんて…

あたしの「ひみつ」、
たった一回の嘘。

「お前、子供ができないのは俺にも問題があるって言ったよな!」

返す言葉がなかった。

「これは奇跡なんだ!俺の子である以上、俺には責任がある。だから別れてくれ」

あなた、
そんなに自分の子にこだわりがあったの?

サキをあんなに可愛がってたじゃない?

「あたしは、仕方ないとして、サキはどうなるの?」

「サキも可愛い俺の子だよ。でも、もう大人、一歩手前だろ。これから生まれてくる子を、父なし子にする訳にはいかないじゃないか!」

「サキにはあなたからちゃんと話してね。あの子、あなたの事、本当に大好きなんだから!」

あたしが嘘さえついてなければ、
あなたの浮気もただの浮気で終わっていたのかも。

サキから父親を奪うこともなかった。

でも、
意外に悲しくない。

あたし、
なんか、
こうなること、
わかってた気がする。

いつか、
バチが当たるってさ…








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