秘密~「ひみつ」のこと
ちょっとお洒落なコーヒーショップ。

彼はブレンド、ストレート。
あたし、クリームソーダ。

注文した飲み物がテープルの上に置かれ、
なんか、居心地悪さが顔を出す。

これって、
不釣合いな二人の関係を表してる?

前に座る彼は、
全く気にするそぶりもなく、
ブレンドを口にする。

ストローでクリームソーダを一混ぜすると、
泡がはじける様に上に向かって上っていく。

綺麗…

「前に飛び降りようと思ったって、何時のこと?」

なんか、ストレートな質問に戸惑った。

「高校生のとき、かな…」

不思議と、もう、思い出しても苦しくない。

「受験失敗した、とか?」

「ハハ、受験失敗ね、それもありかな」

「じゃ、なに?」

「大失恋。嘘…ってか、人生の失敗に気が付いて…」

「高校生で?」

そんなに真面目な顔しなくったって…

「そうですよ、いけませんか?だから、今のあたしは、人生の落伍者なんです」

そう、もう諦めてるから…

「君、いくつ?」

「32」

なんか、正直に答えてた。

「まだ、人生これからって歳じゃない。君、綺麗だし、そんなこと言わずに前向きに、な!」

なんか、
真面目なビジネスマントークって感じ。

この人って、
いつも彼の発した言葉通り
前向きに生きてるんだな、
って、そう思った。

目が真直ぐで、
とっても綺麗で、
なんか、
反発する気も起きなくって…

「これも何かの縁だよ、何か困ったことあったら、電話して!」

彼はそう言うと、ポケットから名刺を差し出した。

ホント、ビジネスマン。

名刺には、

<ビジネスコンサルタント 鈴木翔一>

って書いてあった。






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