秘密~「ひみつ」のこと
給料日前日、
懐が寂しいよぉ~

なんか、
ふと思いついて、
もらった名刺に電話してみた。

あの人の
優しい顔が思い浮かんだから…

「はい、鈴木です」

堅い声が電話に出た。

あたし、ちょっぴり場違いな気分。

『なんか困ったことあったら、電話して…』

そんな言葉真に受けて、
あたしって馬鹿?

「あの…あたし、小林唯です」

「こばやしゆい?」

あっ、そうか、
あたし名前、
名乗ってなかったっけな。

「あの、少し前に歩道橋でお会いした…」

「あぁ~あの人生の落伍者さんね」

そんな風にインプットされてたんだ、
あたしのこと…

「…」

「ごめん、茶化すつもりじゃないんだ。それで、何か困ったことでも起こったのかな?」

「えっと、給料日前で、お金なくて、夕飯でも奢ってもらえないかなって…」

良かった、
電話してって言ったことは覚えてたんだ。

「そんなことでいいの?そうだな~イタリアンでも、行くか?」

イタリアンって、
そんなかしこまったレストラン
気が引ける…

「あの…あたし的には、ラーメンとかファミレスのハンバーグとかで充分なんですけど…」

「僕が食べたいんだ」

「なら、まぁ、イタリアンでも、いいです」

仕方ないか、
こっちは奢ってもらる立場だしね。

「じゃあ、新宿西口交番前に7時。今日は早く帰れそうだから、丁度良かったよ」

「新宿?」

「嗚呼、僕の仕事場、近いからさ」

「了解。じゃあ、7時に。よろしくお願いします」

なんか、仕事って感じ。





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