秘密~「ひみつ」のこと
あたし一応、
一張羅のワンピース着て出かけてった。

ちゃんとしたレストランだろうし、
彼に恥かかせちゃ悪いしさ。

イタリアンは美味しかった。

でも、後が悪かった。

食事にワインが出て、
あたし
飲めないのに、
無理して口をつけた。

なんだか、
飲まないと
馬鹿にされるような気がして…

気分が、
悪くなって、
立てなくなった。

翔一さんは、あたしをほとんど抱きかかえるようにして店を出て、近くの公園で休ませてくれた。

「ユイちゃん、大丈夫かい?悪かったね、飲めないなら、飲めないって言ってくれれば…」

「二口、飲んだ、だけです…」

ほんと、軽く二口だけなのに…

「体質的に駄目なんだね」

「かも…」

翔一さんが買ってきてくれたポカリスエットを一本飲んで、少し気分が戻ってきた。

「今日、ありがとうございました。美味しかったです、料理は…」

早く帰らなくっちゃって、
立ち上がると、
やっぱりまだ目眩がした。

「一人で帰るの無理だな。タクシーで送ってくよ」

またまた彼の真面目な顔。

「でも、あたしのアパート汚いし、恥かしい…」

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」

翔一さんが拾ってきたタクシーに、
無理やり押し込まれた。

「で、家はどこ?」

「野方、環七からちょっと入ったとこ」

なんか、
もう、
どうにでもなれ!
って感じ…

「運転手さん、とりあえず近くまで、お願いします」

あたしの気持ちなんか、
おかまいなしに、
タクシーは躊躇することなく、
走り出した…


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