秘密~「ひみつ」のこと
沖縄は暑かった。

まだ6月、
っていうのにさ…

翔一さんは、
折角来たんだからって、
首里城見て、
ちゅら水族館へ連れて行ってくれた。

巨大水槽で泳ぐ、
大きな甚平鮫見て、
あたし驚いて声も出なかった!

張り付いたように、
水槽眺めて、
しばらく動けなかった…

子供みたいだね、
自分でも恥ずかしい。

翔一さん、
そんなあたしを見て、
クスクス笑ってた。

その後、
ビーチで寝転んで、
アイスクリーム食べて、
波打ち際で足ぬらして遊んだ。

子供にかえった気分。

あたしさ、
ほんと、
旅行なんて経験ないからさ。

修学旅行すら、
行かなかったしさ。

翔一さんは
パラソルの下で、
何やら難しそうな本を読んでいた。

夕方、
浜辺を二人歩きながら、
海に沈む夕日眺めて、
天国ってこんなところかも…
って、夢見心地で
翔一さんの横顔見つめて、

こんな時間っていうのも、
あるんだ…

そう思った途端、
なんか急に、
胸が締め付けられた。

あたしに
こんな時間、
過ごす資格ない…

ディナーの間も無口になった。

「なんか、あんまり楽しそうじゃないね」

口に運ぶ食事も
美味しければ、美味しいほど、
飲み込むのが苦しいよ…

「ううん、そんなこと、夢みたいで…」

「そうは見えないな」

真直ぐな目で見つめられて、
嘘がつけなかった。

「夢みたいで、悲しくなっちゃって…」

涙がこぼれた。

「それに、日に焼けて痛いし…」

あたし、
火照った腕を
ぎゅっと押さえた。





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