秘密~「ひみつ」のこと
夜、翔一さんの部屋をノックした。

「どうしたの?」

眼鏡をかけ、本を片手に
翔一さんが不思議そうにドアを開ける。

「あの、背中、ローション塗ってもらえませんか?」

「嗚呼、お安い御用さ。でも、見事に真っ赤だね」

「へへ、リゾートって慣れてなくて…」

なんかちょと恥ずかしい。

翔一さんと別々の
あたしの部屋。

別々ってさ、
どう言う意味かな?
あたしのこと、
妹か子供みたいに思ってるってこと?
あたしのことなんか、
女として見てないってこと?

「ちょっと待っててください」

バスルームに入り、
服を脱いだ。

鏡に映る自分の姿、
日焼けした赤い肌と白い肌
そのコントラストが妙に滑稽で笑えた。

あたし、
女として魅力ない?

不安な気持ちをバスタオルで隠して、
バスルームをでた。

「じゃ、これ、お願いします」

翔一さんにアロエローションを手渡すと、
タオルで前を隠しながらベッドにうつ伏せになった。

あたし
勿論、
一糸纏わぬ
生まれたままの姿。

翔一さんには、どう見えるんだろう?

「大胆だな」

翔一さんは、そう言うとアロエローションを丁寧に背中に塗りだした。

火照った身体に、
すうっとローションがしみ込んでいく。

翔一さんは、
大きな手の平で、
叩くようにローションを塗る。

慣れてるんだ…

瞳を閉じた。

暖かい、
翔一さんの手の温もり、
優しさも、
しみ込んでいくよ…








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