秘密~「ひみつ」のこと

新しい命

「なんか、ユイさん、近頃楽しそうっすね」

バイト先の後輩、
健に、
そう言われて、
気がついた。

あたし、
なんか、
最近、
毎日笑ってる。

幸せで…

笑い方なんて、
とっくの昔に
忘れたと思ってた。

旅行から帰って次の日、気まずい出勤日。

無断欠勤、
したからなぁ~
首かな?

恐る恐る店に顔を出すと、

「ユイちゃん、おばさん大丈夫だったのか?」

なんか、
優しく声かけられた。

「えっ、あっ、はい。沖縄まで行って、会って来ました」

なんか、
咄嗟にでまかせ言って誤魔化した。

「そっか、良かったな。それで、ついでに日焼けしたのか?」

「えっ、まぁ、半日外にいただけなんですけど、油断しちゃって…」

「沖縄は、日差し、強いからな」

どうなってんの?

後から、健に聞かされた。

無断欠勤の日、
『あたしのおばさんが危篤で休む』って、健が出鱈目言って誤魔化してくれたんだって。

あいつ、
あたしの代わりに、
一日通しで出てくれたらしい。

健には、
あたしの両親、
死んだって、
話してあったから。

助かった…

「ユイさん、いつも真面目だから、店長、全然疑いませんでしたよ」

「でも、ユイさん、ホントは彼氏と沖縄旅行だったんですか?」

健はケロッとした顔で言った。

「お礼に今度、食事、奢って下さいね!」

今どきの若者は、チャッカリしてるよ。

兎に角、
サンキュー!
食事くらい、
何時でも、
ってか、
まぁ、
何時かね。

なんか、
皆、
いい人だな。










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