愛のしるし
「あ、花火、始まったね」
菜都は俺の腕の中でそう呟いた。
そう。今日はこの辺で一番大きな花火大会の日。
そして、去年のこの日この場所で、俺と菜都は付き合い始めたのだ。言わば俺達の大切な記念日なのだ。
菜都はこの前の教室で、俺にこのことを話したんだ。でも、俺が聞いていなかったから、いきなり怒ったんだ。
いつもはこんなことじゃ怒らない菜都が怒ったのは、今日がとても大切だという証拠。
俺は菜都をさらに強い力で抱きしめた。
「今年も菜都と、この花火が見れて良かった…」
「そうだね。来年も、見れると良いね」
「見れると良いじゃなくて、絶対見るんだよ!」
「海、子供みたい」
笑いながらそう言われて、俺は少しムカついてバッと菜都を離す。
肩を掴んだまま、彼女を見つめた。