紅新雪
白い雪
派遣切りにより職を失う若者が急増―。
大手企業が多額の赤字を理由に大量解雇―。

ゲレンデに向かうツアーバスの中、暇潰しに朝のニュースを見たのは失敗だったらしい。
暗い内容に深い溜息をついてワンセグを終了し、今週ダウンロードした新譜の着うたを再生した。

俺の名前は黒沢明隆(クロサワアキタカ)。
24歳の独身。
経済危機の波に飲まれて勤めていた会社は倒産。
年明け早々に晴れてニートの仲間入りを果たした身だ。

職安に一度足を運んでみたが、あまりに人が多過ぎて望みは薄そうだった。
この際長期休暇と思って少しの間ノンビリ過ごす事にした。

イヤホンから流れる曲に耳を傾けながら、何となく通路を挟んだ席で寄り添うように眠る男女に目を向ける。

女の名前は白石真由美(シライシマユミ)。
俺の彼女である白石綾美(シライシアヤミ)の妹で俺の二つ年下だ。口では少し生意気な所があるけど、意外と気の効く子でもある。
男の方は坂本大和(サカモトヤマト)。
俺達から『坂やん』という愛称で呼ばれる真由美の彼氏だ。

仕事のある綾美を残して、俺達は三人でスノーボードツアーに参加している。
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