『鏡の中のマリア』
バン!!――


「麻莉乃!!」

いきなり母親が入ってきた。

「あなた何てことするの!!
麻莉乃から離れなさい!!!」

暁生を引き離す。



私はフラフラっとベットを抜け、
鏡の前に立っていた。


鏡の中の私。

引き裂かれたワンピースの
胸元には、何も・・・ない。


『どうして・・・』


自分で見た幻覚?

震える手で自分の胸に触れてみる。

『傷が消えちゃった・・・』


私は、麻莉乃として

生きながら


鏡の中のマリアに問いかけ、

助けを求めてきた。



本当の自分に・・・。


『なかったんだ・・・』




放心した私の足元に
母親がすがりつき、

「麻莉乃~・・・麻莉乃~」
と声をあげて泣いていた。
< 110 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop