machine
俺達は裏山を登った。
俺はマコトの車椅子を押していた。

今、現実はテクノロジーとマシーンに支配されている。
どんな情報も机に座って一発で手に入れる事ができる。
何不自由ないこの社会で、マシーンに欠けている事は「心」。
善と悪を見分ける事。
それをマシーンは教えてくれない。
人が与えた課題をいいも悪いなしに無感情に処理していく。
マシーンをどう使うかによって、人は天使にも悪魔にもなれる。
天使の心をもった少年が悪魔の選択をしてしまったんだとマコトくんの背中を見て感じた。
いつのまにか俺の中でマコトくんへの恨みの気持ちはどこかへ行ってしまっていた。

「あの。。」
マコトくんが振り向いた。
「何?」
「お名前聞いてなかったです。」
マコトくんの顔があどけない少年の顔に戻っていた。
「えーっと、俺はユウキ。そこの大きいのがミツヒコ。それで、そこのうるさいのはマキ。」
「うるさいってなによー!」
「はははは」
マコトくんが始めて笑った。

「着きましたよ。」

林を抜けたそこには、小さな裏山の頂上が見えてきた。
緑の草に覆われた小さな頂上は、太陽に近かった。
大きな木の下にミツコちゃんのお墓はひっそりと作られていた。
気持ちのいい初夏の風が俺達を迎えてくれた。
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