machine
「僕、ここには始めてきました。」
「そうね。マコトは始めてだったわね。」
マコトくんが、車いすを降りようとしていた。
俺は思わず手をだした。
「大丈夫です。一人で立てますから。」
「マコト。。。」
マコトくんは、一生懸命一人で立とうとしていた。
「あぶない!」
マコトくんは体勢を崩した。
誰よりも先にお母さんが手を差し伸べた。
「まだ、ダメみたいだ。」
「大丈夫。ゆっくりでいいの、すこしずつでいいのよ。」
この母の言葉がマコトくんの全てを包み込んでいるんだと思った。

俺達は、ミツコちゃんのお墓にお花とお線香をそえた。
マコトくんは、車いすを降りてひざまずいてミツコちゃんのお墓に手を添えていた。


ここには何もない。
テクノロジーもマシーンも何もない。
あるのは、自然と人間。
人を作るのは機械じゃない。
人の手助けをするのは機械かもしれない。
でも、本当に人を助けるのは人しかない。


「さあ、そろそろ行きましょうか。」

そう言ったお母さんの言葉が「生きましょうか」に俺は聞こえてならなかった。

山の上の心地よい涼しい風に、大きな木が葉を揺らし、
俺達に手を振ってくれているかのように見えた。


「さあ、俺達もいきましょうか。」



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