迷子のコイ
タカくんの姿が
公園から消えたのを確認した佐伯くんは

怖かったのと
安心したので
バカみたいにボーと突っ立ている
あたしのそばにやってきて
ポンポン、と
頭をなでてくれた。


呆然としたままの
あたしの手をとり、カレは
木かげのほうへと連れて行き
そこにふたりで腰をおろした。


何も言わず
ただとなりに
カレがいてくれることが
今のあたしを支えてくれた。

ホッとしたことで流れた涙が
止まるまで
カレは何も言わずに
となりに座ってくれていた。




――――――――そうしてやっと
あたしが我にかえって泣き止むと
今度はなんだか
泣き顔を見られたことが
とても恥ずかしくて
いたたまれない思いが
胸を突き刺した。


「・・・おちついた?」


「・・・うん・・・」

さやしく尋ねる彼の言葉に
鼻水を軽くすすりながら、
あたしは言った。


「アイツ・・・
あのあと待っても練習にこなかったから
 なんかイヤな予感がして
 来てみたんだ」



・・・普段、部活を休まない佐伯くんが
あたしせいで
大事な部活を休んでしまったことに
申し訳ないキモチでいっぱいだった。


だけど、なぜだろう・・・。


不謹慎だとわかっていても
あたしは嬉しさを止められずにいた。

カレが、あたしを
たすけにきてくれたということに・・・。

 


「あのさ・・・
 俊哉には俺からうまく言っとくから」


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