迷子のコイ
「あたしっ 俊哉のことはスキじゃないよ!」


カレの誤解を
解かなきゃいけないことばかりを
考えて出た言葉は
あまりにもストレートなものだった。

でもさすがに
『ヒドイ言い方をした』と思ったあたしは
あせって言い直す。


「えっと、今のは・・違うの。
 なんてゆーのか・・・
 俊哉のことはスキだけど
 スキじゃないっていうか・・・。
 俊哉は大事な『トモダチ』ってだけだから!」


そこまで一気に言ったあたしは
その言葉を
佐伯くんがどうとらえたかなんて
まったく気がついていなかった。。

あたしのその言葉を
隣りで聞いていた彼の表情が
険しくなりつつあったことも。


「・・・オマエ・・・
 やっぱりムカツクな。」


唐突に佐伯くんが言葉をもらした。


カレはいきなり
立ち上がったかと思うと
自分のジャージについていた
草を払いながら、言った。


「オマエ、ムカツクわ。
 ・・・タカの言ってたことも、
 あながちハズレじゃないかもな」


持ってきたスポーツバッグを肩にかけ
あたしの腕を乱暴に引き寄せる。


「送る」


それだけ言って、カレはその日
あたしとは二度と口をきかなかった。



カレに送ってもらった2度目の帰り道・・・・
この間送ってもらったときとは違って
となりにいることが、つらかった。


「・・・アリガト・・・」


家についたとき、
カレに伝えたその言葉にも
カレは何も答えずに
黙ってその場を立ち去った。



『近くなっては、遠くなる・・・。』

カレとあたしは
一生こんな感じなのかもしれない。



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