迷子のコイ
「・・・そーいえばアイツ、辞めたんでしょ」


「・・・アイツって?」


ナギは一瞬周りを見渡しながら
小声であたしに言った。


「タカだよ!」


ナギの口から
タカくんの名前を聞いたとたんに
あの日のことが蘇ってきた。

あれからカレとは口をきいていない。

たまにカレが
遠くからこっちを見ていたけど
あたしは
その視線に気づかないフリをした。


「1ヶ月くらい前に辞めたって、
 俊哉が言ってたよ。
 『こんな時期に何考えんだ!』って」


「ふ~ん、そうなんだ・・・」


「アイツもホントお騒がせなヤツだよね!
 ・・・おう! ミナ!
 新カレとはうまくいってる?」


「うん! か~な~り!!」


ちょうどあたしたちの横をとおった
ミナちゃんに、
ナギが声をかけた。


以前はタカくんのことで
色々あったあたしたちだけど、
ナギが倒れて以来、
前のよーな関係に戻りつつあった。

ミナちゃんは最近
新しいカレができて、幸せそう。


そう、もとに戻りつつあった。
―――――『沙紀ちゃん』意外とは。


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