迷子のコイ
「あら?
 アイリあなた、
 こんな時間にどこか行くの?」


部屋からおりてきたあたしを見て
ママが訊いた。


それもそのはず。


いつもなら家にいるとは
ヨレヨレのパジャマ姿が定番のあたし。

こんな時間にフツーの服を着てるなんて
我が家ではありえないことだったから。



時間は、7時を過ぎたとこ。

佐伯くんとの待ち合わせまで
あとちょうど、1時間。


バカみたいに落ち着きのないあたしは
さっきから家中を
ウロウロしていた。


「あのね・・・ナギの家に
 ちょっと行こうと思って・・・」


「こんな時間に?」


「・・・うん。
 明日テストなのに
 ノート忘れてきちゃったから
 ナギに見せてもらおうと思って」

 
「あら、そうなの」

< 114 / 203 >

この作品をシェア

pagetop