迷子のコイ
「俊哉ぁ」


「ん?」


「・・・・ぁりがと、ね!」


「は? なに?」


なんだか照れくさくて
ちっちゃな声で言ったその言葉は
俊哉には聞こえなかったみたいだった。


「なんだよっ」



「う~んとね、
 ナギに、『ちゃんとお金払え』って言ったの!」


あたしは俊哉から逃げるようにして
近くにいたナギの後ろに隠れた。


「そーよ、俊哉」


背の高いナギが
あたしをそのまま後ろに隠しながら
仁王立ちして俊哉に言った。


「あとで、取立てにくるからね」


ナギがそう言った直後、
無常にも午後の授業を告げるチャイムが
学校全体に響きわたった。


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