迷子のコイ
( 佐伯くんだ! )


とっさにそう思った。


( よかった! 
  やっぱりこっちのベンチで
間違ってなかったんだ! )



その人影が近づいてくるまえに
あたしは指でサッと髪を整えた。

心臓が嬉しさでドキドキしている。


・・・けれどその人影が
『男のコ』だってわかるまで近づいたとき
そのワクワクしたドキドキ感は
冷たい・・・
イヤな緊張感へと変わっていった。


「早坂・・・」


あたしを呼ぶ
そのヒトのカオが
はっきりと暗闇に浮かびはじめる。


「・・・ごめん、待った?」


イヤな笑いを浮かべながら、
『タカくん』が、そこにいた。


< 120 / 203 >

この作品をシェア

pagetop