迷子のコイ
「あの手紙だしたの、オレだよ」


「・・・ウソ!」


「ホント。
 てゆーかさぁ、
 ウソついてたのはそっちだろ?
 オマエら、ホントはつきあってないんだろ?
 じゃなきゃここに来るはずないもんな!」


「きゃっ!」


カレの手が、乱暴にあたしの腕をつかんだ。


「沙紀がさ、言ってたぜ。
 『佐伯の名前つかえば、
 オマエは絶対来る』ってな」


「沙紀ちゃんが・・・・?」


頭のなかに、沙紀ちゃんの顔が浮かんだ。
その目は、この場にいるかのように
あたしをにらみつけ、こっちを見ている。


「・・・オレとつきあえよ」


「・・・オレ、ホントに早坂のことスキなんだよ!」


「ヤッヤダ!!」


あたしは自分でも無意識に
タカくんを突き飛ばしていた。



( ・・・怖い・・・ )


それだけしか感じることができずに走り出した。



「早坂!」


カレがあたしを追いかけてくる。

サッカー部で
走りなれてたカレに追いつかれるのは
時間の問題だった。


「きゃっ!」


後ろからカレに手をとられ、
勢いあまっていたアタシたちは
その場に倒れこんだ。


「・・・離してッッ!!」


あたしの上に
覆い被さるような形になっているカレに言った。


「静かにしろよ!」


カレはあたしの口元をふさいだ。
走ったせいで かいた汗が、
カレの頬から
あたしのカオへとおちてくる。
・・・・キモチが悪い・・・。






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