迷子のコイ
「・・・早坂っ!!」


その声と同時に
急にあたしの体が軽くなったような気がした。


「・・・早坂っ、大丈夫か!?」


あたしの首から手が離れ、
あたしの体は自由になった。

そしてすこしたったのち
急に空気が体内に入り込んだことで
あたしは激しく咳き込んだ。

息をするのが
こんなに苦しいなんて初めてだった。


「早坂!!」


あたしは、背中を優しくさすってくれたヒトの顔を見た。


( ・・・佐伯くん・・・ )


「・・・立てるか?」


カレに差し伸べられたその手をつかみ
よろけながら立ち上がった。


「・・・行こう」


カレに支えられるようにして
歩きだしたあたし達。


けれどまだ、終わってはいなかった。


「・・・佐伯!」


怒り狂った声で佐伯くんを呼ぶ、男の声。


「オマエ、なんなんだよ!
 いっつも邪魔しやがって!!
 オマエのせいでオレの人生
 台無しなんだよっ!!」


言うが早いかタカくんは
ポケットから何かを取り出した。

暗闇に光る・・・・それはナイフだった。





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