迷子のコイ
一瞥し、遠ざかるその人を今度こそ
あたしは追いかけることができなかった。




( あれは、カケルだ・・・ )


あたしを責めたのは
カケルの『お母さん』なんかじゃない。

あの言葉は、
あの目はきっと
『カケル』の本心なんだと、あたしは思った。


・・・不思議に、頭の中は静まりかえっていた。
涙すら、でなかった。



『アイリ』


カレが倒れたとき、
1度だけあたしを『名前』で呼んでくれた
あの声に、愛おしさが募る・・・。



「・・・カケル・・・」



・・・やっと、わかったの。


どうして隣りにいると、嬉しかったのか。
どうしてふたりになると、苦しかったのか。

あなたを傷つけて、
会えなくなって、初めてわかった『想い』。


それは 全部全部
あたしがあなたを、好きだったから・・・。
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