迷子のコイ
「・・・ねぇ、ゆいちゃん。
 それって・・・絶対?」


自信ありげに彼女は言った。


「・・・うん、絶対!
 それに、ね・・・ちょっと足ひきずってたし」


最後だけ言いづらそうに
ゆいちゃんは声を小さくした。


「でもさ、カレ確かアメリカ行ったんだよね?
 いつ帰ってきたのかなぁ」


「・・・ゆいちゃん、ゴメン!
 あたし、行くね!」


「え、ちょっとぉ アイリぃ!」


ゆいちゃんをその場に残し
あたしは彼女がカケルを見たと言う
コンビニに向かって走った。


「いらっしゃいませぇ」

中に入ると、
あたしと同じくらいの女のコが
レジのところにいる。


あたしは早足で店の中を1周したけど
カケルらしき人は見当たらなかった。


すこし落ち着きを取り戻したあたしは
雑誌を手にとり、読むフリをして
外を歩く人たちをチェックした。


( もしかしたらカケルが通るかもしれない )


ただ、それだけを祈って。


1時間・・・2時間

時間だけが刻々と過ぎていき・・・・・。


けれど結局その日
カケルの姿は現われなかった。

カケルの影にすら出会えずに
あたしはトボトボと
そのコンビニをあとにした。
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