迷子のコイ
中3の夏休み、
あと数日を残して
カケルは病院から姿を消した。
カケルがその病院から姿を消したことは
俊哉でさえも、知らされていないことだった。
学校がはじまり、
先生から事の詳細を
ようやくあたし達は聞くことになる。
母親と共に
カケルがアメリカで
最新の治療を受けることになったという事を。
俊哉は最初、
『足が治るんなら』
そう言ってカケルがアメリカに言ったことに
文句を言わなかった。
そのうち連絡がくるって、そう信じてたから。
でもカケルからの連絡は一向に来ず、
そのうちあたしの前で
カケルの話はしなくなった。
――――あれから、2年が経とうとしている。
「最初に見かけたのは、豊島だったんだ」
『豊島くん』は、
俊哉と同じサッカー部の人で
あたし達とは中学も一緒だった。
ちょうど彼女と遊んでるとき、
カケルを見かけたって。
あまりにもソックリなその人に
豊島くんはおどろいて
彼女とはその場で別れて
こっそりアトをつけたって。
そしてカケルの住む
マンションにたどり着いたらしい。
「俺もさ、行ったんだよ」
「・・・あたしも・・・」
俊哉がカケルを見に行ったことは
知っていたけど、
まさかナギも行ってたなんて、
正直思っていなかった。
「まちがいなく、カケルだったよ」
ナギがギュウっとこぶしを握りながら、言った。
「でもあれは、あたしたちの知ってる
『カケル』じゃない」
あと数日を残して
カケルは病院から姿を消した。
カケルがその病院から姿を消したことは
俊哉でさえも、知らされていないことだった。
学校がはじまり、
先生から事の詳細を
ようやくあたし達は聞くことになる。
母親と共に
カケルがアメリカで
最新の治療を受けることになったという事を。
俊哉は最初、
『足が治るんなら』
そう言ってカケルがアメリカに言ったことに
文句を言わなかった。
そのうち連絡がくるって、そう信じてたから。
でもカケルからの連絡は一向に来ず、
そのうちあたしの前で
カケルの話はしなくなった。
――――あれから、2年が経とうとしている。
「最初に見かけたのは、豊島だったんだ」
『豊島くん』は、
俊哉と同じサッカー部の人で
あたし達とは中学も一緒だった。
ちょうど彼女と遊んでるとき、
カケルを見かけたって。
あまりにもソックリなその人に
豊島くんはおどろいて
彼女とはその場で別れて
こっそりアトをつけたって。
そしてカケルの住む
マンションにたどり着いたらしい。
「俺もさ、行ったんだよ」
「・・・あたしも・・・」
俊哉がカケルを見に行ったことは
知っていたけど、
まさかナギも行ってたなんて、
正直思っていなかった。
「まちがいなく、カケルだったよ」
ナギがギュウっとこぶしを握りながら、言った。
「でもあれは、あたしたちの知ってる
『カケル』じゃない」