迷子のコイ
「・・・アイリ・・・これ・・・」
帰り際
俊哉が何かを差し出した。
それは白い、ノートの切れ端だった。
「・・・何? これ?」
あたしは2つに折られたその紙を開いた。
中には、住所がかかれている。
「カケルの、住所」
「え?」
「・・・女と暮らしてるけど
もしオマエがどーしてもアイツに会いたいんなら
1回、行ってみれば?」
「・・・俊哉・・・」
「・・・そーすればオマエも
吹っ切れるかもしれないだろ?」
あたしは俊哉をじっと見つめた。
俊哉はそんなあたしから視線をそらすと
「ナギには内緒な!」
そう言ってそのメモを
ナギには見られないように
ギュウッとあたしの手の中に握らせた。
・・・ねぇ、俊哉。
どうしてだろう。
あたしはカケルに、ひと目会いたかった。
ずっとずっとカレに、会いたかったの。
でも、どうしてかな。
俊哉にメモを渡されたとき、
すごく、怖くなったんだ。
女のヒトと住んでるからじゃない。
カレと会って拒絶されたら、
それがすごく、怖いよ。
手の中には、白い紙。
あたしは開いて、また閉じた。
いまのあたしとカケルをつなぐ
たったひとつの手がかりを、
あたしはその日
片時も離さずに、握りしめ続けてた。
帰り際
俊哉が何かを差し出した。
それは白い、ノートの切れ端だった。
「・・・何? これ?」
あたしは2つに折られたその紙を開いた。
中には、住所がかかれている。
「カケルの、住所」
「え?」
「・・・女と暮らしてるけど
もしオマエがどーしてもアイツに会いたいんなら
1回、行ってみれば?」
「・・・俊哉・・・」
「・・・そーすればオマエも
吹っ切れるかもしれないだろ?」
あたしは俊哉をじっと見つめた。
俊哉はそんなあたしから視線をそらすと
「ナギには内緒な!」
そう言ってそのメモを
ナギには見られないように
ギュウッとあたしの手の中に握らせた。
・・・ねぇ、俊哉。
どうしてだろう。
あたしはカケルに、ひと目会いたかった。
ずっとずっとカレに、会いたかったの。
でも、どうしてかな。
俊哉にメモを渡されたとき、
すごく、怖くなったんだ。
女のヒトと住んでるからじゃない。
カレと会って拒絶されたら、
それがすごく、怖いよ。
手の中には、白い紙。
あたしは開いて、また閉じた。
いまのあたしとカケルをつなぐ
たったひとつの手がかりを、
あたしはその日
片時も離さずに、握りしめ続けてた。