迷子のコイ

俊哉から渡されたメモを頼りに、
数日たってやっとあたしは
カケルが住んでるマンションへと足を向けた。


迷って・・・・・迷って・・・


会いたい気持ちと
会えない気持ちが交差したこの数日間。

メモを開いては閉じ、
閉じては開いて、
今ではもう、紙はヨレヨレになっていた。


『メゾン・ソレイユ』


レンガ調に建てられたその建物は
何棟かの集合住宅が建ち並ぶ一画にあった。

カケルの住んでるというマンションは
2階建ての合計8室のマンションだった。


( ここにカケルがいる )


そう思うと胸がいっぱいになり、
あたしは大きくため息をついた。


部屋番号は、203。

階段を静かに昇りながら、
あたしは少しずつその部屋へと近づいた。

赤いドアの前までたどり着いたけど
結局その日はチャイムは押せず、
あたしはうなだれながら、家へと戻った。



そして次の日も、
その次の日も。

部屋の前まで行っては
結局何もできずに家へと帰る。

そんな日々が、更に続いた。





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