迷子のコイ
「あら?」


ドアの前にいたあたしを
階段をあがってきた
20代くらいの女のヒトが
不思議そうに見ていた。


「あの、なにか?」


あたしの立っていた
ドアの前で立ち止まると
そのヒトはあたしに声をかけてきた。


きれいにお化粧をしたそのヒトからは
とてもいい香りがした。


「あっあのっ あたし!」


「もしかして、カケルのトモダチ?」


気さくに笑いながら、そのヒトは言った。


「こないだもね、男のコがたずねてきて。
 中学のトモダチって言ってたからさ」


(  俊哉のことだ )


とっさに、そう思った。


「アイツ、まだ寝てると思うけど、
 どーぞ入って」


ドアのカギを開けながら、
あたしを中にうながす。


 
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