迷子のコイ
「何も言わないわよ、どうして?」


話してるうちに、
どんどん自分が
この女を嫌いだという感情が沸いてくる。


「・・・カケルはね、何も言わないわよ」


私はもう1度、彼女に言った。


「だって彼は、
 私がそうやって稼いだお金で生活してるんだもの」


「え?」


「聞いてないのぉ?」


・・・夜、働いてるというだけで
人を蔑むような目で見るこの女を
もっともっと、傷つけてやりたくなった。



「カケルはねぇ、私が拾ったの」


「ひろ・・・った?」


「そうよ。1年前にね。
 それからはずーっと私が面倒見てるの。
 心も、体もね」


目の前にいる平和そうな女子高生は
あきらかに嫌な顔をした。


「それじゃあ私、これから仕事だから」


( 勝った )


そう思った。


どうせ平和にのんびり暮らしてきた子でしょう。

年上の、
まして夜の女に食べさせてもらってるなんて
カケルの評判も最悪ね。


 
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