迷子のコイ
「ああ、そうだ」


私はバッグから
キーホルダーのついた、鍵を渡した。


「・・・なんですか?」


「うちの、鍵よ。
 今日カケル、カゼ引いて寝てるから
 よかったらお見舞いに行ってあげて。
 鍵はポストに入れてくれればいいから」


「・・・困ります!」


私は彼女を引き離し、
そこからタクシーに乗って店まで行った。


「・・・カケルは私のモノよ」


そうつぶやいた私に
タクシーの運転手は


「なんですか?」


と聞き返してきた。


「・・・いいえ、なんでも。
 そうだ!
 よかったら今度、お店に来て下さいよぉ。
 サービスしますから!」


そう言って私は

《 美羽 》と書かれた名刺を
そのタクシー運転手に手渡した。
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