迷子のコイ
Act.10 迷子のコイ
美羽《みはね》・・・と名乗った
カケルの彼女は、
言いたいことだけ言って、
立ち去っていった。


あたしの手のなかに、
彼女たちの住む、
部屋の鍵を残して――――。



( いったい、なに考えてるんだろ )


あたしはその鍵を見つめながら
彼女の気持ちを読み取ろうとした。


あたしとカケルが
『友達』だと、思っていたから?
だからお見舞いに行けって?


・・・でも本当は、
あたしの中で答えはもう出ていた。


彼女は多分、知っているんだ。
あたしの
カケルに対するこの想いを。

それを知って彼女は
あたしに『お見舞いに行け』と
部屋の鍵を渡した。


なぜ・・・?
わからない・・・。


あたしなら絶対に
そんなことはしないのに・・・・。
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