迷子のコイ
茶色のドアをそっと開けると
ベッドの脇に立つ
ルームライトだけが
ほのかに明かりを灯してた。


殺風景な、部屋。

大きなダブルベッドだけしか置かれていない。

その場所からかすかに
誰かの寝息が聞こえてくる。


導かれるように
ベッドのある部屋の中央へと
足を踏み入れた。



そのベッドには
彼女・・・美羽《みはね》さんの言ったとおりに
カケルが眠っていた。

カゼのせいだろう。
カレは苦しそうに眉間にシワを寄せながら
体を小さくして、眠っている。


ベッドの横に腰をおろし、
あたしは眠っているカケルのカオを
ただ黙って見つめていた。


手を伸ばせば
すぐそこにある、
カケルのカオ。


『触れたい』 と
男のヒトにそんなこと、初めて思った。


愛しくて、
ただ愛しさだけが溢れ出てきて
あたしはカレが生きていてくれたことに
改めて神さまに感謝した。


そばにいられなくても
カレが生きていてくれたこと。

ただそれだけが
ずっとあたしを支え続けてくれていたんだ。
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