迷子のコイ
「・・・来いよ」


部屋の前で
カケルはあたしを呼んだ。


「いーよ。ここで待ってる」


リビングにあるソファに座る。


「・・・なにもしねーから」


そう言うカケルが
さっきまでとはうってかわって
さびしそうな目をしていることに
あたしは気づいた。


そうだ。
中学のときのカケルは
よくこんな目をしてたっけ。


中学時代のカケルの目に
吸い寄せられるように
あたしは『今』の
カレの部屋へと入った。


相変わらず
ベッドだけしか置かれていない
殺風景な部屋。
< 171 / 203 >

この作品をシェア

pagetop