迷子のコイ
「この泥棒!
 人がいないときに
 勝手に部屋に入って!
 涙使ってオトコをおとそうなんて
 ずうずうしいんだよ!
 出てけっ!!」


「きゃっ!」


あたしを出て行かせようと
彼女は階段まで
あたしを追いやった。


そのとき
勢いあまり
足のもつれたあたし達は
そのまま階下へと
落ちそうになった。


「アイリ!」




( 落ちる・・・! )


体が一瞬 宙に浮き
落ちると思った瞬間
力強い力が
あたしを支えていた。

カケルの腕だった。


カケルはもう片方の手で
力いっぱい
階段の手すりをにぎりしめ
落ちそうになったあたしを
受け止めてくれていた。



「アイリ、大丈夫か!?」


蒼い顔をして
カケルが訊いてきた。


「・・・うん、大丈夫」


頭を強くふられ、
なんだかクラクラとしていた。


「カケルぅ・・・
 美羽《みはね》さんは・・・?」


あたしはすぐに
彼女のことを気にかけた。


ふたりで同時に見た先には
階下で血を流しながら倒れている
彼女の姿がそこにあった―――――。









 
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