迷子のコイ
「・・・美羽《みはね》に、
 会ったのか?」


どのくらいたったのか。


「・・・うん。
 この部屋の鍵を渡してくれた」


「そっか」


あたしたちはずっと
お互いを抱きしめるように
心のうちをさらけだした。



「あの時オレ、
 一瞬、美羽と目が合ったのに・・・」


いいながらカケルは
唇を強くかんだ。


きっとずっと
自分を責め続けていたんだろう。


カケルの唇には
おおきなカサブタができていた。


「・・・同罪だよ」


あたしはカケルに言った。


もしかしたら、
あたしがあの日
ここに現れなければ
ふたりはずっと
うまくいっていたのかもしれない。


あたしがふたりを
壊したんだ。










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