迷子のコイ
「それじゃあ、そろそろ」


「うん」


カケルの乗る飛行機の
搭乗時間、ギリギリ。


別れが近づくにつれて
あたしたちは
お互いに無口になっていた。


「・・・これ・・・」



カケルがあたしに
小さな包みを渡す。


「何?」


「開けてみて」


カケルに言われるがまま
あたしはその包みをひらいた。

なかにはハートをかたどった
かわいいネックレスが入っていた。


「これ・・・」


あたしはおどろいて
カケルをみた。


「ホントはアメリカから帰ってきた日
 オマエに渡そうと思ってたんだ。 
 ・・・誕生日にあわせて、帰ってきてたから」


「・・・カケル」


「今度・・・いつかまた会うとき・・・」


カケルはそのネックレスに手を伸ばすと


「つけててくれるか・・・?」


そっと、あたしの首へとかけてくれた。
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