迷子のコイ
「カケル・・・・・」


あたしはベッドに横たわったまま
その名前を口にした。

もうずっと口にしたことのない、
そのヒトの名前を・・・。

もう会うことのない、
そのヒトの名前を・・・。



ずっと、ユメでもいーから
会いたいと思っていた。

だけどユメで会ったら
会えなかったときの
もっとずっと何倍も
カレに会いたいキモチが募りだす・・・。



『 会いたいのに、会えない・・・・ 』



カレが今、どこで何をしてるのかも、わからない・・・。



「カケルぅ・・・・会いたいよ・・・」



ずっと
『思い出さないようにしてきた』、想い。

思い出すと
カレへのキモチがとめどなく溢れて
弱い自分がでてくるのを知っていたから。


ユメの中のカレの顔は
あたしの思い出のなかのカレ、
そのものだった。


声が聞きたい・・・。
その手に、触れたい・・・。
・・・・・そばに、いたい。


会いたくて会いたくて募る想いに
うす暗い部屋のなか
あたしはヒザをかかえて
カレのことだけを、想っていた---------------。
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