迷子のコイ
「・・・うわっ!
 なに、その顔!!」


「うるさい!! ナギ!!」


家が近所なこともあって
ナギは毎朝あたしを迎えにきてくれる。


それはもう、
出会ったときから変わらない
朝の習慣だった。


「あばさぁん、アイリの顔 超ヒドクない?」


「・・・もう~ナギ、うるさいっ!」


あたしは
ナギに奪われた蒸しタオルを
ムリヤリ奪い返して目にあてた。

夜中に泣きすぎたせいか、
あたしの目は 
はれまくっていたからだ。


「・・・でもマジ、ヒドイよね・・・」


あたしはナギに色々言われながらも
そのはれたカオを鏡でみて
自分でも笑ってしまった。

二重の目が一重になって
ホントに
『オマエだれだ!』ってカンジ。



すると、ナギがスススっと
音を立てずに近寄ってきて
小声で聞いてきた。


「・・・もしかして、泣いた?」


真夜中に見た、
あの懐かしいユメのことを
ナギに話そーか迷ったけど
心配かけたくなくて
あたしはあのユメを
そっと自分の胸のなかに
閉じ込めることに決めた。





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