迷子のコイ
「ナギはなんで
 髪、伸ばさないの?」


「・・・ん~、
 あっコラ! 動くなって!」


ナギに話しかけるのに
うしろを向こうとしたあたしを
ナギが注意する。

それでもあたしは気にせずに話しつづけた。


「ナギ、巻くのもうまいから
 のばせば色んな髪型できるよぉ」


今では人並みに
自分で巻けるよーになったあたしだけど
不器用で、
最初、うまく巻けなかったあたしを
見るに見かねて
手伝ってくれたのもナギだった。

今でもナギのほうが
巻くのがウマイとあたしは思ってる。



「・・・伸ばすと、さ・・・」


「ん?」


「・・・メンドーじゃん!
 はいっ オワリっ!!」


「・・・うわっ何これっ かわいー!!」


鏡を見たあたしは思わず言った。


「・・・ちょっとぉ、
 自分で『カワイー』とか、フツウ言うか?」


「えっ!
 だってだって、この巻き髪、超カワイーよ!」


自分の髪で練習もしてないのに
なんでこんな『巻き』ができるのか
もうこれは
ナギを尊敬するほかないくらいだった。


「ナギさ、美容師になりなよ!
 そしたらあたし、お客として毎日行くからさ!」


「それは どーも・・・
 ほら、アホなこと言ってないで
 もう行くよっ!!」


そういってあたしの重い腰をあげさせて
ようやく学校へと向かいだす。

これがあたしたちの
ずっと変わらない
毎朝の習慣だった-------------。

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