迷子のコイ
「お・か・ね!」


「げっ!
 今持ちあわせないから
 立て替えといてくんない?」


クネクネしながら
おねだりのポーズをしてる俊哉が
なんだか かわいくて
あたしは思わずクスクスと笑った。


「はぁ~?
 なんで あたしが?
 あんた、絶対あとから払わないじゃん!」


「いや、今度はマジ払う!
 だから、な! 頼む!!」


『お願い』ポーズをする俊哉に
ナギが呆れ顔で言った。


「・・・わーかったよ。
 で、なに買うの?」


「あ、俺ピノな」


「まぁ~た~」


俊哉のピノ好きは中学の頃からで
コンビニに行くと
いつも買ってて
みんなに笑われてた。

ふたりのやりとりを
よこで見ていたあたしに


「あ、そーだ、アイリ」


「えっ」


俊哉が急にマジメな顔をして、言った。
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