迷子のコイ
「・・・・・ねぇ」


「・・・・・・・・・・・・・」


「ねぇ、ナギっ!!」


「・・・・・・・・・・・・・」


「ナギってばぁ!!」




あたしは、前を無言で歩くナギの名前を
何度も何度も呼んだ。

学校からの帰り道、
いつも一緒に帰るナギは
何も言わずに
さっさとひとりで帰ろうとした。

あたしはそのナギのあとを
早足で追いかけながらあとを追った。


絶対にきこえてるはずなのに、
ナギはあたしの呼ぶ声を
ムシしつづけた。



あたしが『痩せた』のを、
まだ怒っているせいだ。


「ねぇ、ナギぃ、ごめんね!
 今日からはちゃんと食べるからぁ!」


ナギのまわりを
行ったり来たりするあたしに
ナギは1時間ぶりにやっと
その声を聞かせてくれる気になったようだった。


「夕ごはん・・・いつから食べてなかったの?」


いきなりに問いかけに
しどろもどろになりながら


「きのう、1日・・・だよ?」


ナギの目を見れずに答えた。

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