迷子のコイ
「なぁ~んか、ヘンなの!」


コンビニに行く途中
口をとがらせながら
あたしはナギに言った。


9月になったのに
まだぜんぜん蒸し暑くて
外に出たのをすこし後悔した。


「ヘンって何がぁ?」


「俊哉だよぉ。
 なぁんか言いたげだったのにさぁ。

 そーだ!
 あのとき ふたりでアイコンタクトしてたよね!
 なんだったのぉ?」


そんなやりとりを繰り返しながら
5分くらい歩いて
学校から1番近くのコンビニにたどりつくと、

なかに入ったとたん
ヒヤッとした空気が流れて
首のまわりにまとわりついていた
熱気が
いっきにはなれていくのを感じた。


「ああ~すずしい~」


ふたりから思わずそんな声がもれる。







「アイリ、なに買ったぁ?」


「う~ん・・・ティラミス・・・」


ナギは不満げに
あたしが手に持ってる
ティラミスに目をやった。


「えっ またぁ!!
 あんたも俊哉のこといえないじゃん!
 最後には結局それだよね!」



ナギに言われて
初めて自分でも
『そうかも』って思って、なんだか笑えた。


そんなナギの手には
新商品のお菓子と
俊哉に頼まれたピノがあって


「やっぱ、買ってあげるんだねぇ」


あたしは
ナギには聞こえないくらいの声でつぶやいた。


 
 
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